大和歌曲 「万葉集」より、持統天皇, 「春過ぎて」 Man’yo-shu, Empress Jito
春過ぎて 夏来たるらし 白妙の
衣干したり 天の香具山
空に舞い上がる風
大地の力 若葉の息吹
早苗の上を かけぬける風
天より降りし(おりし) 香具山に
早乙女の白き衣のひるがえり
幾多もかなた
美しい国
解説
春過ぎて
この歌は、持統天皇が初夏の美しい景色を歌ったものです。
抜けるような青空と、いきいきとした山の緑、そこにひるがえる田植え後の早乙女の白い衣の、色の対比が歌の中心であるように思えます。しかし天皇が詠んだ歌となれば、そこには別の意味が加わります。天に向かって「神さま、今年も豊かな実りをお願い
します」という祈りであり、この国が豊かで安らかであるようにという祈りでもあります。持統天皇がこの歌を読むまでには、壬申の乱などの政変を経験し、ようやく政情が安定して安堵してこの国の豊かな未来を祈っている歌なのです。
作曲時にも「美しい国でありますように」と祈りをこめました。